中高生に向けてお届けしている【カラダとココロの教室】。2時間目は、命が生まれる現場に携わる助産師さんが、普段から10代に伝えている性教育を深掘り! 長野県助産師会の皆さんに、「中高生へ伝えたい“性と命”」について、たっぷり教えていただきました。
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「助産師」ってどんな仕事?
ーー助産師さんのお仕事がまだよくイメージできません。どんなことをしているのですか?
助産師は、妊娠・出産・育児を支える専門職です。実は看護師免許と助産師免許の2つの国家資格が必要で、その専門性を生かしてさまざまな場所で働いています。
メインの仕事は、自然で安全なお産のサポートや、母乳育児のケア。病院やクリニックで働く方、個人で助産院を開く方、行政や学校で相談業務を行う方もいます。実は、皆さんの身近なさまざまな場所や機関に関わっている職業なんです。
そして助産師は妊娠・出産だけでなく、思春期の健康相談も行っています。病院の産婦人科や助産院では、中高生の方の健康相談にも対応しているんですよ。
ーー助産院でも相談できるんですね! 妊婦さんが行く場所だと思っていました。
そう思っている方は多いですが、助産院は、皆さんのような10代の方たちにも、もっと身近になってほしい場所です。最近は、若い世代に向けた“未来の健康づくり=プレコンセプションケア”にも力を入れています。
ーー1回目の連載でもプレコンについて学びました! 助産師会では、どんなお話をされるのですか?
たとえば、高校生向けの「プレコンセプション出前講座」では、高校時代の生活習慣、男女ともに必要な性に関するリテラシー、自分のライフプランを主体的に選ぶ力などについてお伝えしています。
簡単に言うと“未来の自分のための健康づくり”。将来、妊娠や出産を望む望まないに関わらず、10代からカラダやココロを整えておくことがとても大切です。
生理、睡眠、食事、ストレス…。どれも中高生の皆さんが日々向き合っていることですよね。こうした習慣を大切にすることが、“自分を大切にする力”につながるんですよ。

「性教育」は、性行為の話だけじゃない
ーー助産師の皆さんが性の話を伝えるときに大事にしていることは?
一番大切にしているのは、“自分ごととして考えられるか”です。
学校の性教育の授業って、どうしても「聞かされる」形になりがちですよね。そこで、私たちは最近のニュースや身近な出来事を題材に、リアルな話題から性のことを考えてもらっています。
例えば…、ここで皆さんにクイズです。
「生理中に性交渉をしても妊娠しない…、○か×か?」
答えは×。「生理中は安全日だから妊娠しない」というのは、間違いです。精子が体内にいられる期間の長さや、排卵日のズレなどがあるため、妊娠する可能性はゼロではありません。
こんなふうに、性の知識には“思い込み”と“本当のこと”の差がある場面がたくさんあります。その差に気づいた時、「もしかして、自分にも関係あるかも」と感じ始めます。そう思った瞬間から、性教育は“自分の話”になるんです。そこが一番大事ですね。
ーー確かに、身近で自分に必要なことと思えると、関心が高まります。でも、“性”と聞くとちょっと恥ずかしい気が…。
それは、これまでの社会が「性=秘めておくもの」としてきた背景があるからでしょう。だからこそ、性の話を人前でするのは恥ずかしいと感じがちになるのかもしれませんね。
でも今は、0歳から性教育が始まる時代です。たとえば、赤ちゃんのおむつを替えるときに「おしりをきれいにするね」と声をかけることも立派な性教育。自己認識のない赤ちゃんでも、親はプライベートゾーンに触れるときにひと言添える。その積み重ねで、子どもは自然と“自分のカラダは大切なもの”と学んでいきます。
つまり性教育は性行為だけの話ではありません。“命を大切にする学び”なんですよ。
ーー性教育の概念が変わってきました。 でも、妊娠・出産の話などと聞くと、性教育は女の子向けのことだと感じてしまいますが…
いいえ、性は“みんな”の話です。今話したように、性は「自分のカラダを大切にすること、命を大切にすること」です。であれば、当然、男の子にも関係することなんです。
男の子も生活習慣や体調によって、将来の妊娠に関わる力、たとえば精子の質が変わります。
夜更かしや食生活の乱れは男女問わずカラダに影響します。スマホの使い過ぎもよくないという報告もあります。だからこそ男の子も“自分のカラダを知る力”を持ってほしいですね。

「性被害」はネットの世界だけじゃない、身近な問題
ーー 最近はネットを通じた性のトラブルも多いですよね。
これには私たちも、とても心配しています。
SNSやマッチングアプリなどで知り合った相手に甘い言葉で誘われ、性的な写真を送らされてしまうケースなど、悪質な行為が増えています。これは“セクストーション(性的脅迫)”と呼ばれ、画像をネタに金銭や性行為を要求されるなど、深刻な事態に発展することもあります。実際に、こうした被害に悩んでいる10代の相談を受けたこともあります。
このような悪意のある行為は明らかな犯罪です。でも気をつけてほしいのはネット上だけでなく、身近な男女関係の中でも、“同意のない性行為”は犯罪です。「交際している=性行為をしなければならない」という考えは間違いです。これを10代のうちから知っておくことが本当に大切。嫌なことは「嫌」と言って大丈夫! その勇気を持ってほしいですね。
ーーでも、日本ではNOと言いづらい雰囲気もありますよね。
そのとおりです。だからこそ、最近注目されているのが「イエス・ミーンズ・イエス(Yes Means Yes)」という考え方です。これは、性行為には明確なYESが必要で、沈黙や曖昧な態度は同意(YES)とは言えない、つまり“はっきりとしたYES”がなければ同意とは言えない、という考え方です。
性的な場面では、必ず「性的同意」が必要です。そのことを知らないままでいると、気づかないうちに相手を傷つけてしまったり、自分が“加害者になってしまう”可能性もある。これはぜひ覚えておいてほしい大切なポイントです。
性の話題は、まだオープンにしにくい社会ですよね。そのため、ネットで情報を得ることもあると思いますが、その情報が必ずしも正しいとは限りません。だからこそ、困ったときには必ず私たちのような専門家に相談してほしいのです。正しい知識を得ることで、自分で正しい選択ができるようになります。
助産師が中高生に伝えたいことって?
ーー助産師さんが、中高生にアドバイスしたいことは?
産婦人科外来には、10代の受診も決して少なくありません。受診理由はさまざまですが、最近増えているのが性感染症に関する相談です。
まずは性感染症が「将来のがんや不妊」の原因となる可能性があることを知ってほしいです。
例えば、性感染症の一つであるクラミジア感染症は、自覚症状が殆どないため感染に気づかず長く放置してしまうと、その間に卵管が癒着し卵子と精子が出会いにくくなる事で、将来「こどもが欲しい」と思った時に授かりにくくなる場合があります。
また、HPV(ヒトパピローマウイルス)は、感染すると長い時間をかけて子宮の細胞を変化させ、特にハイリスク型HPVが残り続けると細胞がゆっくりがん化することがあります。WHOは子宮頸がんの約90%がHPV感染によるもので、予防手段としてHPVワクチン接種を推奨しています。小学6年生〜高校1年生までの女子であれば公費(無料)対象になります。また、20歳からの定期的な子宮頸がん検診も未来の自分を守る為に大切です。HPV感染は女の子だけの問題ではありません。男の子も感染しますし陰茎がんなどのがんの原因になることがあります。男子の公費でのHPVワクチン接種が始まってきており、徐々に全国の自治体に広がっていくと予想されます。コンドームを使用しても「安全」は100%ではありませんが、避妊だけでなく性感染症予防にも効果があります。
今は困っていなくても、少し先の未来で悩まないために、そして情報があふれている今だからこそ正しく知識を得ることが大切なんです。そして、困ったときや悩んだときは、必ず周囲に相談してください。行政にも相談窓口がありますし、私たち助産師会でも木曜日に無料電話相談を行っています。誰かに性や健康について相談したいと思ったら、ぜひいつでも利用してくださいね。
合わせて、関連の専門サイトも紹介します。
- 国立成育医療センタープレコンセプションケアセンターHp:https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/
- 京都府ホームページ きょうとプレコン高校生教育プログラム:
https://kyoto-kosodatepia.jp/preconception/

知ることが未来を選ぶ力になる!
ーー性教育の大事さが分かってきました。最後に、中高生に向けてメッセージをお願いします。
小学生にも伝えているのですが、「自分を大切にする」という感覚を持つことが、最初に大事なことです。その感覚は、「自分のカラダは自分のもの」という意識を育みます。そしてその気持ちは、相手を大切にする力にもつながります。
性別に関係なくカラダを“知ること”が大切。“みんな違ってみんないい”という気持ちを持ってほしいですね。皆さんのカラダは本当にすごいんです。だからこそ、そのカラダを持つ自分を誇りに思い、大切にしてくださいね。
私たち助産師は、“命を守る教育”をしていると思っています。恋愛も、結婚も、妊娠も、すべては「自分のカラダ」を通して起こること。だからこそ、自分のカラダを大切にし、未来を選ぶ力を持ってほしい。それが私たち助産師の願いです。
取材協力:一般社団法人 長野県助産師会
女性の一生を支える助産師、約220名の会員が所属。県内を10地区に分け、地区ごとに活動し、無料電話相談・オンライン相談・おしゃべり会などを開催している。
電話無料相談「性と健康の助産師相談」
℡0263-31-0015
木曜のみ/10時〜14時、19時〜21時
妊娠・出産・子育てなどについて無料で相談できる。中高生も利用でき、自分のカラダの悩みや不安を相談可能。迷ったときは、気軽に助産師さんへ相談してみて。便利な公式LINEアカウントもあり。

