「陣痛がきたらどうする?」「お産はどんなふうに進むの?」「退院までに学べることは?」

初めての出産は、不安でいっぱいです。

丸の内病院では、医師・助産師・看護師が 連携し、お母さんと赤ちゃんの安全を第一に考えた医療体制が整っています。自然なお産をサポートする院内助産や入院中のアメニティなど、お母さんの要望に応えているのも特徴です。

今回は、Bさん(初産婦)の体験をもとに、丸の内病院での出産から1か月健診までの流れを紹介します。

目次

陣痛から入院まで

ある日の午後

Bさん:「パパ…陣痛かもしれない…。お腹がすごく痛い」

Bさん:「5分間隔になった…! 病院に電話するね」

助産師は電話で落ち着いた声で質問します。

助産師:「いつから痛み始めましたか?どのように痛みますか? …はい、分かりました。慌てず、気を付けてお越しください」

二人は病院へ向かう準備を始めました。


陣痛時のチェックポイント
電話するタイミングは、妊娠経過や⾃宅から病院までの距離などによって人それぞれ異なります。事前の⼊院案内の際に助産師が個別に指⽰しますが、当日の状況が最優先されます。判断に迷ったら電話で相談してください。
破水かも…と思った場合は、痛みがなくてもすぐに連絡を。
出産の流れは、32 週以降に貸し出されるDVDでも事前学習できます。

外来での診察~入院

病院に到着すると、まずは産科外来で診察を受けます。

助産師:「内診と検査をしますね。…子宮口が開いてきたので、このまま入院になります」

診察後、Bさんは母子医療センターへ。退院までの期間をここで過ごします。

陣痛室での過ごし方

陣痛室に入ったら、まず荷物を降ろし、検尿を採取し、体温・血圧を測定します。その後、お腹には分娩監視装置をベルトで装着します。

助産師:「初産婦さんは進行に時間がかかることもあります。散歩したり、好きな音楽を聴いてリラックスしてくださいね」

看護スタッフは30分おきを目安に陣痛室を訪問。陣痛が弱まったり、間隔が縮まらない場合は、乳頭ケアなど、その時の状況に応じて寄り添います。

個室のため、アロマ芳香浴やシャワー浴も利用できます。病院食が喉を通らない場合は、持参したゼリー食を口にすることも可能です。

付添いはお一人のため、パートナーの方が付き添う場合、実母または義母の方は、ここまでになります。

分娩室へ

Bさん:「痛みが強くなった…」

助産師:「内診してみましょう。…子宮口が全開ですね。分娩室へ行きましょう」

分娩室は陣痛室のすぐ目の前。数歩で移動ができる距離です。

出産(0日目)

分娩台に横になったAさんのそばで、旦那さんが励まします。

夫:「大丈夫、もうすぐだよ」

助産師:「…次の陣痛に合わせて、いきみましょう!」

何度もいきみを繰り返し、ようやく元気な産声が響きます。分娩室は安堵と喜びに包まれました。

分娩室には旦那さんのみお入りいただくことができ、入院病棟へ移動するまでの時間を一緒に過ごせます。


院内助産
丸の内病院では院内助産に力を入れており、条件を満たした助産師が24時間365日勤務できる体制を整えています。
緊急時にも備え、医師と助産師が情報共有を行い、常に迅速な対応が可能な体制を整えています。
さらに、病棟助産師がヨガインストラクターの資格を活かして行うマタニティヨガも取り入れ、妊娠中から心と身体のケアを丁寧にサポート。医師によるバックアップ体制のもと安心して出産に臨める環境づくりにも努めています。

産後の2時間の過ごし方

赤ちゃんが産声を上げると、助産師がそっとお母さんのそばへ連れてきます。

助産師: 「よく頑張りましたね。赤ちゃん、元気ですよ」

小さな手足を動かす姿を間近に見て、お母さんの目に涙がにじみます。

Bさん: 「…ああ、元気に生まれてよかった…」

Bさんは、生まれてすぐに赤ちゃんとの肌と肌の触れ合いを希望していました。

しばらくして呼吸や心拍が落ち着いたところで、助産師が声をかけます。

助産師: 「ご希望どおり、赤ちゃんを胸元で抱っこしてみましょうか」

Bさんは小さな体を胸に抱き寄せ、そのぬくもりに思わず表情がゆるみます。

助産師: 「今夜は赤ちゃんを新生児室でお預かりします。朝までゆっくり眠って、体を休めてください」

Bさんは赤ちゃんを見つめながら、少し安心した表情でうなずきました。

出産後の2時間は、出血や子宮の収縮など産後の変化を安全に見守るため、お母さんは分娩台で安静にしていただきます。
赤ちゃんは体温調整のためインファントウォーマーで保温されながら、お母さんのすぐ横で過ごします。

心拍や呼吸は10分ごとにモニターで確認し、この間に身長・体重・頭囲・胸囲の計測も行われます。

2時間経過後、お母さんはお部屋へご案内します。赤ちゃんは新生児室でお預かりします。


バースプラン(アクティブバース)
丸の内病院では、出産を「アクティブバース」と位置づけ、産婦さんが主体的に、自分らしく産むことを尊重しています。赤ちゃんを胸の上で抱いて触れ合う(スキンtoスキン)、旦那さんが抱っこする、家族で写真を残すなど、事前にご希望を伺っています。

産後1日目:母乳育児とおむつ交換

この日から母児同室が始まり、おむつ交換などの育児指導もスタートします。

母乳育児を希望するBさんには、助産師が授乳のポジショニングをサポートします。

助産師:「もう少し赤ちゃんの顔を胸の方に近づけてみましょう。そうすると飲みやすくなりますよ」

Bさん:「あ、さっきより楽に吸いついてくれました」

助産師:「お母さんの姿勢も大切です。肩の力を抜いて、楽な体勢で続けてみましょう」

授乳などの介助を希望する場合は、夜間でも看護スタッフがサポートします。

赤ちゃんはいつでも新生児室に預けることが出来ます。 お母さんはシャワー浴が可能になり、リフレッシュの時間も確保できます。

赤ちゃんはK2シロップを内服し、小児科医による全身チェックを受けた後、助産師による沐浴が行われます。

夕方、助産師がにこやかに病室を訪ねてきました。手には大きな袋。

助産師: 「Bさんにプレゼントをお持ちしました」

Bさん: 「えっ、なんですか?」

助産師: 「松本市で人気のパン店『Ecru』の焼き菓子セットですよ」

Bさん: 「えっ、Ecruの! こんなにたくさん…嬉しいです」

助産師:「クッキーなどが入ってボリュームもあるので、お腹が空いたときに、いつでも食べられます」

Bさん: 「嬉しいです…! 夜中の授乳の合間にも、つまめそうですね」

助産師: 「はい、甘いものは心の栄養にもなりますから。どうぞ楽しんでくださいね」

袋の中をのぞいて笑顔になるBさん。産後の疲れた心身に、少しほっとした時間が訪れました。

産後2日目:沐浴指導(見学)

「沐浴指導」が行われ、お母さんは助産師が代表の赤ちゃんを沐浴する様子を見学します。自宅での沐浴をイメージしやすいよう、ポイントを解説してもらえます。

赤ちゃんは聴力検査を受け、小児科医による全身チェックのあと、スタッフによって沐浴が行われます。

産後3日目:産褥指導と乳房マッサージ

お母さんは助産師による乳房マッサージを受け、母乳分泌を促したり授乳時の不快感を和らげたりします。

「産褥指導」では、産後の体調変化や自宅での過ごし方、回復の目安などについて詳しい説明を受けます。

さらに薬剤師から、改めて、赤ちゃんに投与するK2シロップについての説明も受けます。

赤ちゃんは小児科医による全身チェックを受けた後、助産師による沐浴が行われます。

産後4日目:栄養指導

森永乳業(株)の管理栄養士による栄養指導が行われ、母乳やミルクなどについて学びます。

赤ちゃんは小児科医による全身チェックを受けた後、助産師による沐浴が行われます。

その後、Bさんはベッドサイドに備え付けられたタブレットを操作し、病棟スタッフが制作した動画を再生しました。

Bさん:「入院中に教えてもらったこと、やっぱり忘れてるな…。でも、こうして何度でも見返せるのは助かる。自分のタイミングで復習できるのもいいよね」

動画を繰り返し再生しながら、退院後の赤ちゃんとの生活を少しずつイメージしていくBさん。画面越しに映るスタッフの丁寧な解説に、安心感が広がっていきました。

産後5日目:退院診察とお祝い膳

お母さんは退院診察を受けます。尿検査、血圧・体重測定のほか、医師による内診と経膣超音波検査で子宮の回復を確認します。

赤ちゃんは小児科医による全身チェックと助産師による沐浴を受けます。

K2シロップを内服し、先天性代謝異常の検査も実施(結果は1か月健診で確認)します。

助産師:「いよいよ退院が近づいてきましたね。体調に不安はありませんか?」

Bさん:「少し疲れやすいくらいで、あとは大丈夫です」

助産師:「診察でしっかり確認しますから安心してくださいね」

昼食は眺めの良いラウンジで「お祝い膳」が提供されます。

スタッフ:「今日は特別メニューですよ。ノンアルコールワインもご用意しました」

テーブルには前菜から始まる洋食のコース料理が一皿ずつ並び、メインはステーキ。最後には華やかなデザートの盛り合わせが登場します。

Bさん:「わぁ、豪華…!まるでレストランのコースみたいですね」

他のお母さんと一緒に楽しむこともでき、出産を乗り越えた自分へのご褒美のひとときとなります。


現場の声を活かす取り組み
丸の内病院では、「周産期医療の現状と将来を考える委員会」を開催し、妊婦さん、妊婦さんに一番に近い現場スタッフの声をサービスに活かす取り組みを行っています。お祝い膳のコースメニューの考案や、シャワーヘッドに有名ブランドのものを取り入れるなど、実際の声が生きています。

面会ルール

  • 面会時間: 14時~17時
  • 1日2人まで、1回15分程度
  • お母さんとは談話室で直接会えますが、赤ちゃんは感染予防のため、ガラス越しでの対面となります。

入院中のスケジュール(例)

曜日ごとにプログラムが決まっていて、集団指導となることもあります。

  • 沐浴指導:月曜・木曜
  • 産褥指導:火曜・金曜
  • お祝い膳:月曜・木曜
  • 森永乳業(株)の管理栄養士による栄養相談:水曜

産後6日目:退院の日

出産当日を含めて7日間で退院。

赤ちゃんをチャイルドシートに乗せ、Bさん一家は新しい生活へと踏み出します。

産婦健診(2週間後健診)

出産後2週間を⽬処に、病棟助産師がお母さんの子宮の回復状態の確認、血圧測定、尿検査、育児に関する相談を行います。

続いて、赤ちゃんの全身観察、皮膚の状態や臍の様子をチェック。必要に応じて小児科医に引き継ぐこともあります。

相談内容としては、「母乳が足りているか」といった栄養に関する心配が多く寄せられます。

なお、産婦健診は、産婦健康診査受診票(補助券)を⾃治体からもらっている ⽅が対象です。

1か月健診

赤ちゃんと一緒に産科外来で受付をします。

お母さんは血圧測定と尿検査、医師による内診と経膣超音波検査を行い、産後の回復が順調であるかを確認します。

相談がある場合には事前に質問票へ記入していただき、その内容をもとに、医師や助産師が対応します。授乳や夜間の育児など、具体的な悩みを相談できる大切な機会です。

赤ちゃんは身長・体重測定、小児科医による反射や発達の確認を行います。

同じエリア内で母児の診察が完結するため、移動は最小限で済みます。

1か月健診でできること

  • 医師によるお母さんの回復チェック
  • 産科や小児科の医師、助産師への相談

丸の内病院の特徴

  • 旦那さんの立ち合い出産が可能
  • 院内助産を導入。助産師が主体的に分娩をケアし、必要に応じて24時間待機する産科医師が対応するバックアップ体制
  • 産後のお母さんには、松本市のパン店「Ecru」の焼き菓子セットをプレゼント
  • 個室利用者には追加でハーブティー(ティーバッグ)をプレゼント
  • ベッドサイドテレビにスタッフ制作の動画(沐浴・産褥指導など)を収録し、好きなタイミングで復習可能
  • 赤ちゃんのベッドに呼吸異常を感知する「安全センサー」を設置。災害時、お母さんと赤ちゃんが一緒に避難するための防炎避難具「レスキューママ」(スリングと頭巾)も備付け
  • 入院特典の「お祝い膳」は、眺めの良いラウンジで提供
  • 退院後は2週間後の産婦健診、母乳育児健診、産後ケア、1か月健診で継続サポート
  • 分娩時間(時間外・深夜・休日など)による追加費用は発生しません。休日・時間帯に関係なく一律の料金です
  • 産科医、小児科医はもちろん、必要に応じて麻酔科、小児外科、形成外科など専門の医師とも連携し、お母さんと赤ちゃんの安全を最優先しています
  • 宿泊・日帰りの産後ケア事業を実施しており、他院で出産された方もご利用いただけます

医師・助産師からのメッセージ

産科医師より
出産は、産婦さんとご家族のためのものです。私が信頼を寄せる助産師たちとともに、「いいお産だった」と心に残してほしい。私はあくまでサブ的な立場でありたいと考えています。

助産師より
主役はお母さんと赤ちゃん、そして支えてくださるご家族やご友人です。私たち助産師は皆さんの声に耳を傾け、その思いに寄り添いながら、「妊娠・出産・育児」の流れを支えていきます。


編集後記
信頼関係で結ばれた産科医師と助産師が連携し、お母さんとご家族の希望に丁寧に応えている姿勢が印象的でした。(ゆめサポママ@ながの 下里)