
「陣痛がきたらどうしたらいい?」「入院中のサポートは?」「退院後も相談できる?」
初めての出産は、不安がいっぱいです。
相澤病院の産科病棟では、助産師・看護師の看護スタッフ・医師が連携し、出産から退院後の一か月健診まで切れ目なくサポートしています。さらに、個室の畳部屋でリラックスした姿勢で出産できる「フリースタイル出産」や、立ち会い分娩、助産師が中心になって出産をサポートする院内助産など、多様なニーズに応える体制も整っています。
松本市で2人暮らしをする30代のAさん夫妻(初めての出産)の体験をもとに、出産から1か月健診までの流れを紹介します。
目次
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陣痛から入院まで
ある日の午後
Aさんは夫と一緒に、自宅リビングのソファで休んでいました。
すると、今までに感じたことのない痛みを感じました。
Aさん「うっ…痛い…これって、陣痛?」
夫「え?そうなの? 間隔、測ってみよう」
時計で計っているうちに、痛みの間隔が短くなっていきました。
Aさん「陣痛の間隔が5分になった! 病院に電話するね!」
電話口の向こうでは、助産師が落ち着いた声で応じます。
助産師「初産婦さんですね。慌てずに準備をしてお越しください」
夫は入院バッグを確認し、Aさんの背中をさすりながら深呼吸を促しました。
陣痛時のチェックポイント
電話するタイミングは、妊娠経過や自宅から病院までの距離などによって異なります。事前の入院案内の際に助産師が個別にお伝えしますが、当日の状況が最優先されます。判断に迷ったら電話で相談してください。
破水した場合は、痛みがなくてもすぐに連絡を。尿漏れかも・・・と思っても、破水の可能性もあるので必ず教えてください。
外来での診察~入院
病院に到着すると、まずは産科外来で診察を受けます。
助産師:「内診しますね。子宮口の開きもいいので、このまま入院になります。尿検査、血圧、体重測定をお願いします」
診察後、Aさんは入院病棟(3B)へ入ります。ここから出産まで、助産師や看護師の看護スタッフのサポートが続きます。
陣痛室での過ごし方
助産師:「陣痛が段々強くなってお産が進んできますが、できるだけリラックスして過ごしましょう。お産は、体がリラックスしているほど、子宮の筋肉がスムーズに動いて、赤ちゃんが降りてきやすくなりますからね。お尻が押される感じや力を入れたい感じが出てきたら教えてくださいね。」
陣痛が弱まったり、間隔が縮まらないような時は、病棟内ウォーキングやスクワットに看護スタッフが付き添うなど陣痛を進めるためのサポートをします。状態によってはリラックスのため、お風呂に入ることもできます。
分娩室へ
陣痛がさらに強まり、間隔も短くなってきました。
Aさんはベッドの手すりを握りしめ、息を整えながら痛みの波をやり過ごしています。
Aさん:「数分おきに陣痛が…! 痛みも強くなってきました…!」
助産師はモニターを確認しながら、落ち着いた声で声をかけます。
助産師:「良い陣痛が来ていますね。赤ちゃんも少しずつ下りてきていますよ。そろそろ分娩室へ行きましょう」
助産師に付き添われ、Aさんはゆっくりと分娩室へ移動します。
いよいよ、出産の瞬間が近づきます。
分娩室での出産(0日目)
陣痛が強まり、Aさんは分娩台の上で、夫の励ましと助産師の声かけに支えられていました。 額には汗がにじみ、手を握る夫の手にも力が入ります。
夫:「がんばれ!」
Aさん:「もう無理…!」
助産師:「タイミングを合わせて…はい、いきんで!」
Aさんは深呼吸をして、力を込めます。
数回のいきみのあと——
元気な産声が分娩室いっぱいに響きました。
Aさん:「生まれた…!」
夫の目には涙が浮かび、助産師が赤ちゃんを優しく胸の上へ運びます。
分娩の立ち会いは24時間いつでもOKです。立ち会えるのは夫またはご家族のうち1名です。交代も可能です。サポートができる人がそばにいられるよう、立ち会い者の事前講習受講などの条件は設けていません。また、予定帝王切開では、夫に限り手術室内での立ち会いが可能です。

産後2時間の過ごし方
お母さんは分娩台の上で過ごします。赤ちゃんは、お母さんの目の届く場所にある「インファントウォーマー」と呼ばれる暖かいベッドで様子を見ます。
助産師:「お母さん、カンガルーケアを希望されていましたね?」
Aさん:「はい、お願いします!」
助産師のサポートで、Aさんは赤ちゃんを胸に抱き、カンガルーケアを行います。温かなぬくもりと鼓動が伝わり、Aさんは安堵の表情を見せました。
バースプラン
相澤病院では、どのような出産を希望するか「バースプラン」を事前に作成します。立ち会い出産のこと、生まれた赤ちゃんを最初に誰が抱っこするか、写真を撮りたいか、へその緒を自ら切りたいか(!?)、胎盤を見たいかなど、出来るだけ妊婦さんが希望する出産を実現します。
希望の一つとして人気が高いのが「カンガルーケア」です。
出産直後に赤ちゃんをお母さんの胸に抱いて肌を合わせることで、体温や呼吸が安定しやすく、母乳分泌も促されるといわれています。

初めての授乳(希望された場合)
カンガルーケアの後、助産師の介助で初めての授乳に挑戦します。
助産師:「ゆっくりで大丈夫ですよ。赤ちゃんの口元をおっぱいに近づけて…」
Aさん:「…吸ってる…!」
授乳がうまくいかないときも、助産師がマンツーマンでサポートします。
赤ちゃんの計測と観察
出産1時間後、赤ちゃんの身長・体重・頭囲・胸囲の計測が行われます。全身を観察し、健康状態を確認します。服を着せた赤ちゃんはベビーベッドに移され、お母さんのそばへ行きます。
お母さんの出血確認と体温測定などの計測
産後は分娩台の上で安静に過ごします。
出産から2時間後、お母さんの全身状態が安定していたら寝室へ移ります。
「母子同室」スタート
助産師:「当院では、出産当日からお母さんと赤ちゃんが同じ部屋で過ごす“母児同室”を行っています。お母さんと赤ちゃんが一緒に過ごすことで、赤ちゃんの泣き方や授乳のタイミングなどを自然に覚えられ、退院後の生活にもスムーズにつながります。お母さんの不安を減らし、赤ちゃんとの絆を深める大切な時間なんですよ」
出産の疲れ具合や希望をうかがい、授乳時間以外は赤ちゃんをお預かりすることもできます。
産後1日目:母乳育児とおむつ交換
朝、助産師が赤ちゃんの体重や体温を測定します。
助産師:「これから赤ちゃんに“ビタミンKシロップ”を飲ませますね。生まれたばかりの赤ちゃんは、血液を固める働きを助ける“ビタミンK”がまだ体の中に少ないので、まれに出血しやすくなることがあります。そうした出血を防ぐための大切なお薬になります」
初めてのおむつ交換は助産師が丁寧にサポートします。
助産師:「おむつ交換、一緒にやってみましょう」
Aさん:「こんなに小さいのに…できるかな」
助産師:「大丈夫です。ゆっくりでいいですよ」
おむつを替えたあとは、授乳の時間です。赤ちゃんの抱き方やおっぱいの含ませ方など、助産師が一緒に確認しながら進めます。夜間でも授乳や抱っこの仕方など、気になることがあればいつでも何度でも、ナースコールを押してご相談ください。

書類説明
スタッフから個別に、出生証明書など産後書類の説明があります。
産後2日目:バースレビューとシャワー浴
助産師と一緒にお産を振り返る「バースレビュー」を行います。
助産師:「出産のとき、どんな気持ちでしたか?」
Aさん:「痛かったけど…スタッフの皆さんがそばにいてくれて心強かったです」
希望者には助産師自らがアロママッサージを施しながらお話をうかがいます。
思い通りにいかなかった部分があっても、「あのとき、がんばった自分」を優しく受けとめられるよう寄り添います。
その後、出産時にできた傷などの回復を確認し、シャワー浴の許可が出ます。

薬剤師からお母さんたちに向けて、予防接種のスケジュールとビタミンKシロップの説明があります(出産後2-4日の間のどこかで)。
院内小児科の医師から先天性代謝異常検査の説明があります(出産後2-4日の間のどこかで)。
面会ルール
面会時間:14時~17時
1日2人まで、1回30分程度
産後3日目:沐浴の見学
助産師が沐浴するところを見学します。
助産師:「赤ちゃんの首をしっかり支えながら…こんな風に優しく洗います」
Aさん:「なるほど、これなら私にもできそう」
赤ちゃんは、聴力検査をします(希望者のみ)
Aさんはこの日、夕食にお祝い膳を予約していました。
スタッフ:「Aさん、今日はお祝い膳ですよ。ヒカリヤさん特製のメニューです」
Aさん:「わぁ、豪華…!こんなごちそう久しぶりです」
テーブルには、地元の新鮮な野菜をふんだんに使った料理が並べられます。見た目にも華やかです。
お祝い膳の時間は、出産を乗り越えたお母さんへのねぎらいのひととき。Aさんの表情にも、少しずつ余裕と笑顔が戻ってきました。

産後4日目:沐浴体験と退院の説明
助産師が横で付き添いながら赤ちゃんの沐浴を体験します。
沐浴槽のそばで助産師が見守る中、Aさんは赤ちゃんの体をゆっくりとお湯に浸します。
助産師:「上手にできていますよ。赤ちゃんも気持ちよさそうですね」
Aさんは緊張しながらも、少しずつ笑顔を見せます。お湯の中で小さな手足が気持ちよさそうに動きました。
その後の退院に向けた説明では、相澤病院の育児冊子『めばえ』を使い、約30分かけて赤ちゃんの安全な寝かせ方や母乳育児のポイント、退院後の生活の注意点を学びます。
助産師:「床に赤ちゃんに危険なものを置かないことは皆さん気をつけますが、意外と、上から物が落ちてこないかの確認を忘れがちです。特に、テレビ台の周辺には注意しましょう」
Aさんはうなずきながらメモを取り、退院後の暮らしを少しずつイメージしていました。
赤ちゃんは、ビタミンKシロップを服用します。
産後5日目:退院に向けた診察
朝の回診が終わり、Aさんは赤ちゃんをそっとベビーベッドに寝かせ、身支度を整えていました。もうすぐ退院の日を迎えると思うと、少し緊張と期待が入り混じります。
助産師:「Aさん、今日はいよいよ退院前の診察ですね」
Aさん:「はい。赤ちゃんと一緒に帰れる日が近づいてきて、なんだか実感がわいてきました」
助産師は、母体の回復具合や授乳の様子、赤ちゃんの体重増加を丁寧に確認します。
退院後の生活リズムや受診のタイミングについても改めて説明し、最後にあたたかく声をかけました。
助産師:「これからも、無理をせず赤ちゃんとの時間を楽しんでくださいね」
お母さんと赤ちゃんの診察内容
血圧・体重の測定、尿検査、血液検査で貧血や回復の状態を確認します。
また、経膣超音波検査では子宮の戻りや出血の有無を確認します。
赤ちゃんは、先天性代謝異常検査をします。
産後6日目:退院の日
これまで支えてくれた助産師やスタッフが、スタッフステーション前で見送りの準備をしています。
助産師:「ご退院おめでとうございます。これからが本番ですが、何かあればいつでもご連絡くださいね」
スタッフたちに見送られながら病棟を後にし、Aさんは赤ちゃんを抱いてエレベーターで1階へ降りました。フロアで待っていた夫が駆け寄り、Aさんから荷物を受け取ります。
夫:「やっと一緒に帰れるね」
Aさんは穏やかにうなずきました。
駐車場で赤ちゃんをチャイルドシートに乗せ、Aさん一家は新しい生活へと向かいます。
初産の方は、出産当日を含めて7日間で退院です。
退院後のサポート:産後訪問
院後1~2週間を目安に、予約した日に病棟助産師がご自宅を訪問します。
入院中の経過を把握している助産師が対応するので、安心してご相談いただけます。
退院から10日後、Aさんの自宅には病棟でお世話になった助産師が訪れました。
助産師:「こんにちは。赤ちゃん、すくすく大きくなっていますね。今日は体重を測らせてくださいね」
助産師は、持参したスケールの上に赤ちゃんを寝かせます。数値を確認する助産師にAさんが話しかけます。
Aさん:「この2週間で顔がふっくらしてきた気がします」
助産師:「ほんとですね。母乳の出も安定してきていますよ。授乳のとき、痛みや張りはありませんか?」
Aさん:「夜になると少し張ってしまって…」
助産師:「それはがんばっている証拠ですね。軽くマッサージしてあげると楽になりますよ」
助産師は授乳の様子を見守りながら、抱き方や赤ちゃんの吸いつき方を丁寧にアドバイスします。その後も、赤ちゃんの発育やお母さんの体調を確認し、安心して育児を続けられるよう寄り添います。
訪問が難しい方には、退院後10日目を目安にお電話で様子をうかがいます。
また、授乳の相談や乳房のトラブルがある場合は、病棟で「母乳相談」を受けることも可能です。必要に応じて、夜間でも対応できる体制を整えています。
産後2週間健診
出産後2週間を目途に、お母さんの心と体の調子を診る健診があります。
健診では、お母さんの尿検査や助産師による面談があります。
必要に応じて、医師による診察を追加する場合もあります。
この健診は、自治体から交付される「産婦健康診査受診票(補助券)」を使って受けられます。
受診票がない方も、自費での受診が可能です。

1か月健診
赤ちゃんとお母さんの両方を診る大切な日です。
受付スタッフ:「こんにちは。赤ちゃんとお母さん、健診ですね」
Aさん:「お願いします」
赤ちゃんは小児科で診察を受けます。身長・体重の計測だけでなく、反射や発達の確認も行います。その後、病棟助産師との面談で授乳や育児の不安を相談できます。
助産師:「授乳の回数はどうですか?よく飲めていますか?」
Aさん:「飲みはいいのですが、夜中の授乳が大変で…」
助産師:「夜の授乳は本当に大変ですよね。回数が多いと眠る時間も短くなりますし…。赤ちゃんの様子を見ながら、少しずつリズムを整えていけるように一緒に考えていきましょう」
お母さんも健診を受けます。血圧や体重測定の後、医師による診察(内診を含む)で母体の回復具合を確認します。
医師:「子宮の戻りもよく、体の回復も順調ですね。今日から湯船に浸かって大丈夫ですよ」
Aさん:「よかった…!やっとお風呂に入れます」
医師:「産後は出血や感染の心配があるので、これまではシャワーだけにしてもらいました。もう体が落ち着いてきたので、ゆっくり温まってくださいね」
その後は、助産師と10分〜30分ほど面談できる時間が設けられています。
Aさんは約20分間の面談で、自宅での過ごし方や気になっていた授乳のことなどを相談しました。
相澤病院の特徴
- 布団を敷いた畳の個室で、自由な姿勢でお産ができる「フリースタイル出産」に対応しています。入院時から産後2時間まで同じ個室で過ごせるため、落ち着いた環境の中で出産を迎えることができます。

- ご家族1名の立ち会い分娩が可能です(帝王切開は予定の方のみとなります)。
- 医師の許可と同意書がある場合は、「院内助産」にも対応しています。
- 赤ちゃんの成長記録ブックやへその緒ケースをプレゼントしています。
- 「バースレビュー」や、病棟助産師によるアロママッサージも行っています。
- 入院中の特典として、院内レストラン「ヒカリヤ」のお祝い膳をお楽しみいただけます。
- 退院後も、産後訪問・電話訪問・2週間健診・1か月健診などを通して継続的にサポートしています。
病棟助産師からのメッセージ

出産はゴールではなくスタートです。当院では、妊娠中から産後まで切れ目のないサポートを行います。1か月健診までの間も自宅訪問や電話フォローで、授乳や育児の不安を一緒に解消していきましょう。赤ちゃんとお母さんだけでなく、ご家族みなさんのサポートを大切にしています。
編集後記
助産師さんたちは、お母さんの身体だけでなく心にも寄り添い、産後の生活を見据えてサポートしている姿勢が印象的でした。(ゆめサポママ@ながの 下里)

