「陣痛が始まったらどうすればいいの?」「入院生活はどう過ごすの?」

初めてのお産には、分からないことや不安がつきものです。

横西産婦人科では、助産師外来をはじめ、フリースタイル出産や育児サポート入院など、妊婦さんとご家族が安心して出産・育児に臨める環境を整えています。

今回は、Cさん(初産婦)の体験をもとに、出産から1か月健診までの流れを紹介します。

目次

陣痛から入院まで

ある朝

お腹の痛みで目が覚めたCさん。時計を見ながら痛みの間隔を測り始めました。

Cさん:「痛みが5分間隔になってきた…」

Cさんは病院から案内された分娩専用の連絡先に電話をかけます。

助産師:「はい、どうされましたか?」

Cさん:「5分おきに痛みがあって」

助産師:「入院の準備をして病院へいらしてください」

Cさんと夫は、母子手帳や「共通診療ノート」などを持って家を出ました。

陣痛時のチェックポイント

  • 電話をかけるタイミングは、妊娠経過や自宅から病院までの距離によって異なります。事前の入院案内の際に助産師が個別に指示しますが、当日の状況が最優先です。
  • 判断に迷ったら、ためらわず「分娩専用の連絡先」に電話してください。代表電話とは異なり、分娩専用の電話番号です。分娩担当の助産師が直接応対します。
  • 「破水かも…」と思った場合は、痛みがなくてもすぐに連絡を。
  • 出産の流れは、検診日初日に案内される予約システム「@リンク内」の「wovie」でも事前学習できます。

外来での診察~入院

病院入り口に設置された「お産専用インターホン」を押すと、病棟助産師が応答します。

助産師:「Cさんですね。歩けますか? ご主人と歩けそうでしたら、そのまま2階へお越しください。歩くのが辛ければ、お迎えに行きます。」

外来を通らず、エレベーターで直接2階ナースステーションへ。

到着後、助産師が内診・破水チェック・胎児心拍確認・血圧測定を行います。

助産師:「子宮口が開いてきているので、このまま入院になります」

Cさんは、尿検査の後で点滴をしてから、夫と2人で陣痛室へ入ります。

陣痛室での過ごし方

Cさん:「全室個室なんだって。広い部屋だね」

助産師:「昨晩は眠れましたか?出産まではまだ時間がかかります。2人とも少し休んでくださいね」

助産師は、旦那さんにCさんの腰のさすり方や指圧の仕方など、旦那さんがCさんの痛みを和らげられる方法を教え、夫婦で出産を乗り越えられるよう丁寧にサポートします。

さらに助産師は、陣痛が進むよう、シャワーでリフレッシュしたり、階段を上り下りする運動を促すこともあります。

付き添いや分娩の立ち会いは、夫または実母など希望を確認して対応しています。

分娩室

  • 分娩室には、快適にリラックスして出産に臨めるよう設計された「バースサポートシステム(BSS)」が導入されています。照明・音楽・呼吸支援音が室内を包み込みます。希望があれば持ち込みのDVDや音楽も視聴可能です。
  • 出産直後には、赤ちゃんの様子をスクリーンに映し出し、ベッドに横になったまま見守ることができます。

出産

Cさん:「痛みが強くなってきた…。押されてる感じがする…」

助産師:「内診しますね。…子宮口が全開なので分娩室へ移動しましょう」

広めの分娩台では自由な体勢がとれます。横向きで過ごしていたCさんも、助産師の誘導とともに上向きになり、お腹に視線を向けました。

助産師:「順調に進んでますよ。この体勢の方が進みやすそうですね」

夫:「呼吸、ゆっくりね。大丈夫、一緒にがんばろう」

助産師:「2人ともすごく上手です」

いきみを繰り返すうちに、赤ちゃんが誕生しました。

助産師:「おめでとうございます!」

バースプラン・分娩サポート

「フリースタイル出産がしたい」「赤ちゃんにすぐ触れたい」「初乳を与えたい」などの希望にはできる限り応えます。一方で「まずは休みたい」という声も尊重し、柔軟に寄り添います。

フリースタイル出産

横向きや四つん這いなど、好きな出産体勢を選べます。助産師が赤ちゃんの下がりやすい姿勢に導くなど、自由度が高いのが特徴です。お気に入りのクッションの持ち込みも可能です。

立ち会い出産

夫や実母など原則1名立ち会い可能。分娩後、病棟へ移動するまでの時間を一緒に過ごせます。
その他希望に応じて対応しています。

産後の流れ

助産師がへその緒を切ったあと、もう一人の助産師が赤ちゃんを受け取り、インファントウォーマーで体温を保ちながら身長・頭囲・胸囲を計測します。

この様子は、分娩台近くのモニターに映し出され、Cさんは夫とともに画面を見守ります。

心拍や呼吸の安定が確認できると、旦那さんが抱っこしたり、記念撮影をすることもできます。

助産師は分娩台のそばに体重計を運び、体重測定します。

笑顔で2人に声をかけながら、まるでクイズタイムのようなひとときです。

助産師:「さぁ、赤ちゃんの体重はどのくらいだと思いますか?」

2人は顔を見合わせながら予想し、発表の瞬間を楽しみます。

一方、お母さんは出血や子宮収縮の様子を観察するため、分娩台で安静に過ごします。

助産師:「赤ちゃんは新生児室でお預かりしますので、今日はゆっくり休んでくださいね」

初産婦さんの過ごし方(出産当日)

  • 分娩後はスタッフが身体を清拭し、創部のケアの方法を説明します。
  • 初めてのトイレは安全のため、必ずスタッフが付き添います。
  • 希望に応じて、赤ちゃんとの同室を始めることができます。
  • 「あとばら(後陣痛)」や会陰部の痛みなど、初産婦さん特有の悩みにも丁寧に対応します。
  • 食事はお部屋で提供されます。

産後1日目:母乳育児とおむつ交換

お母さんは、日中の好きな時間に赤ちゃんを預けて、シャワー浴が可能です。

朝食は3階「ダイニング」で会食スタイル。

お母さんが赤ちゃんを預けて食事をとる間に、助産師が赤ちゃんの体重測定や黄疸チェック、沐浴を済ませます。赤ちゃんはk2シロップを飲みます。

朝食後、助産師がCさんに声をかけます。

助産師:「赤ちゃんがおっぱいを欲しそうにしていますよ。あげてみましょうか?」

Cさん:「…はい、やってみます」

助産師:「私がそばにいますので、安心してくださいね」

Cさんが抱き上げると、赤ちゃんは顔を動かしながらおっぱいを探します。

初めての授乳を、助産師がそっと支えます。

Cさん夫妻は、2人で新生児の育児を学ぶためご夫婦の希望で「育児サポート入院」を行います。「育児サポート入院」とは、夫も妻と同室で過ごし、赤ちゃんのお世話を一緒に行う取組です。

助産師:「そろそろおむつも替えてみましょうか。お2人で一緒にやってみましょう」

夫:「なるほど…お尻を持ち上げて…よし、外せました」

Cさん:「思ったより簡単。でも、きつすぎないか心配…」

助産師:「大丈夫、赤ちゃんも待っててくれますよ」

夫:「よし、できた!」

2人は初めての育児に戸惑いながらも、声を掛け合い、協力しながら新しい生活への準備を進めます。

育児サポート入院

退院後の生活を見据え、夫も日中から個室に宿泊し、入院中から夫婦で赤ちゃんのお世話を学べるプログラムです。
助産師のサポートを受けながら、おむつ替えやミルクの調乳、抱っこの仕方などを夫婦一緒に体験し、退院後の生活を具体的にイメージすることができます。

産後2日目:沐浴指導(見学)と調乳指導

「沐浴指導」では、助産師が赤ちゃんをお湯に入れながら流れを説明します。

助産師:「首をしっかり支えて、ゆっくりお湯に入れていきます」

Cさん:「うちに帰って一人でできるか不安です…。泣いたらどうすれば?」

助産師:「大丈夫。泣いても慌てず、声をかけながら」

「調乳指導」では、森永乳業の栄養士が授乳・調乳のポイントや食事面について説明します。

産後3日目:お祝い膳と退院診察

午前9時から外来で退院診察。血圧と体重測定の後、助産師が内診と超音波で子宮や傷の回復を確認します。

Cさんと助産師は退院後の生活について話し合い、2週間健診の予約を取ります。

赤ちゃんは全身チェックや沐浴、聴力検査を受けます。

夕方は、待ちに待った「お祝い膳」の時間。

仕事を終えた夫が駆けつけ、ノンアルコールのスパークリングで乾杯。
メインの肉料理を中心に、彩り豊かで栄養バランスの取れたディナーが並びます。

夫:「無事に産んでくれてありがとう。これからも2人でがんばっていこう」

Cさん:「うん、うれしい…。そういえば、あなたに用意された食事は、医院長からのサービスだって。私たちの育児を応援してくれてるんだね」

Cさん:「本当においしいね。毎日の食事もおいしくて、すごく幸せ。助産師さんに聞いたら、栄養バランスを考えて作られていて、レシピも教えてもらえるんだって」

入院スケジュールと面会

  • 調乳指導は月曜・木曜の対象者に実施。
  • 沐浴見学以外の授乳・退院指導は個別対応。
  • 面会時間は15~17時、対象は夫・両親・祖父母・兄弟姉妹。

産後4日目:退院の日

赤ちゃんは先天性代謝異常検査や黄疸チェック、K2シロップを服用します。

夫「ほかの病院では産後5日目で退院と聞きましたけど、ここは一日早いんですね」

助産師「以前は産後5日目で退院されていた時期もありましたが、お母さんの体の回復や負担などの良し悪しを考えて、今は産後4日目での退院になりました」

助産師「困ったことがあれば、何でも連絡くださいね。」

赤ちゃんをチャイルドシートに乗せ、Cさん一家は新しい生活へと踏み出します。

2週間健診

事前予約をし、出産後1週間〜10日を目安に受診します。

赤ちゃんと一緒に外来で受付を済ませ、 赤ちゃんは体重測定や黄疸、臍の状態など全身を確認。

お母さんは血圧測定・尿検査、子宮の回復チェックを行います。

授乳や体調、家族のサポートなどについて助産師が丁寧に聞き取ります。

希望があれば医師面談や授乳指導も受けられます。

なお、産婦健康診査受診票(補助券)を自治体からもらっている方が対象です。

1か月健診

赤ちゃんと一緒に外来で受付をします。

赤ちゃんは身長・体重を測定し、小児科医による診察を受けます。

お母さんは血圧測定と尿検査に加え、医師による内診と経膣超音波検査を行い、産後の回復が順調かどうかを確認します。

医院長:「経過はとても順調ですね。育児で悩んでいることや困っていることはありませんか?」

Cさん:「母乳をあげているせいか、すごくお腹がすいて…つい食べすぎちゃうんです」

医院長:「それは自然なことですよ。今は授乳中なので、1日700キロカロリーくらい多めでも大丈夫です。ただ、授乳を終えたら食事量を少し控えて。お子さんとご主人のためにも、お母さん自身の健康を大切にしてくださいね。」

医院長:「それから、婦人科検診は子宮頸がんのチェックを含む、とても大切な検診です。忙しい日々が続くと思いますが、ご自身のため、ご家族のためにも、必ず受診してくださいね。」

1か月健診でできること

  • 医師によるお母さんの回復チェック。
  • 医院長や小児科医、助産師への具体的な相談。

横西産婦人科の特徴

助産師外来

中信地域では「分娩」と「健診」の機能を分けることで安全な出産体制を保っていますが、横西産婦人科はその両方を担っています。

妊娠初期から始まる「助産師外来」では、妊婦さんは、分娩時に立ち会う助産師と早期に顔を合わせることで自然と関係性が築け、精神的な支えにもなります。クリニック側は母体の情報を早期に把握することで、先を見据えたサポートが可能になります。

予約システム「@リンク(アットリンク)」

出産準備から産後の流れまで学べるアプリ。同意説明文書の確認に加え、母親教室や妊婦健診の予約もこのシステムから行えます。

分娩専用携帯番号

37週0日を迎えた妊婦さんには、分娩専用の番号が伝えられます。
この番号にかけると、分娩を担当する助産師に直接つながり、陣痛が始まったときはもちろん、出血など気になる症状についてもすぐに相談できます。

お産セット

入院中および産後に必要な衛生用品をまとめたセットを病棟で用意。入院準備の負担を軽減します。

院内助産

基本的には分娩を助産師が行いますが、医院長はいつでも駆けつける体制を整えています。

食事

産後1日目からは、3階ダイニングで専属料理人による出来立て料理を提供。地元食材を生かした栄養バランスの取れたメニューで、午後3時には手作りおやつも。お祝い膳ではお肉料理を中心とした特別なコース料理を味わえます。

育児サポート入院

出産後も安心して赤ちゃんと向き合えるように、希望者には「育児サポート入院」をご用意しています。旦那さんと一晩一緒に過ごし、ミルクの作り方など新生児の育児を経験できます。

医療連携

お母さんのことは「信州大学附属病院」、赤ちゃんのことは「長野県立こども病院」と連携。さらに松本地域にある他の(分娩)医療機関にも支えられています。

医師・助産師からのメッセージ

医院長より
妊娠・出産は喜びと同時に、不安も多い時期です。私たちも相談にのりますが、地域の保健師など、信頼できる相談先を複数持っておくと安心につながります。少しでも心穏やかに過ごし、この大切な期間を楽しんでください。


助産師より
妊娠、出産、育児は大変なこともありますが、一人で抱え込む必要はありません。不安を感じたときは、どうぞ私たちに任せてください。安心して前に進めるよう、全力でサポートします。



編集後記
妊娠初期の健診から出産、1か月健診までを同じクリニックで受けられることで、お互いを理解し合える安心感が生まれていると感じました。(ゆめサポママ@ながの 下里)