最近、少しずつ耳にするようになった「フェムテック」。カラダやココロの悩みをテクノロジーや日々のケアの工夫で支えるアイテムや考え方のことです。「大人の女性のもの」と思われがちですが、実は10代にとっても身近な不調や違和感の解消に役立つものがたくさんあります。「まず自分を大切にする」ためのヒントとして、フェムテックの考え方を一緒に学んでいきましょう。

【カラダとココロの教室】4時間目ではフェムテック専用サロンを経営し、フェムテックを活用した女性の健康支援を行っている成澤由美子さんと、助産師の天見美穂さんに、10代から知ってほしいフェムテックについて話を聞きました。

成澤由美子さん(右から2人目)と、助産師の天見美穂さん(右から1人目)

INDEX

フェムテックって何?

ーー最近「フェムテック」という言葉を聞きますが、正直よく分からなくて…。

フェムテック(Femtech)は、「フェミニン(女性)」と「テクノロジー(技術)」を組み合わせた言葉で、女性のカラダやココロに関する悩みを技術でサポートするアイテムやサービスのことです。

生理・妊娠・出産・更年期など、女性のカラダは一生の中で大きく変化します。その変化は人それぞれで、つらさや不安を感じる場面も個人差があります。だからこそ、自分のカラダの状態を知り、無理をしすぎないことが大切なんです。

フェムテックは、女性がカラダとココロに向き合い、「自分らしく、気持ちよく生きる」ための手助けをしてくれる存在です。

世界では、フェムテックはすでに生活の一部として広がっています。ヨーロッパでは社会の中で当たり前の選択肢となり、韓国では若い世代を中心に身近な存在となっています。日本でも、少しずつ知られるようになってきましたね。

ちなみに、フェムテックを含めて、女性のカラダをケアする考え方は「フェムケア」と呼ばれています。

ーーアイテムってどんなものがありますか?中高生でも使えるものはありますか?

ありますよ。たとえば、こんなものです。

  • 体調管理アプリ:生理周期や体温が記録できるスマートフォンアプリ
  • 温活グッズ:身体を温め、生理痛や冷えをやわらげるアイテム
  • 吸水ショーツ:ナプキンの代わりに使える生理用ショーツ
  • 月経カップ:ナプキンの代わりに、やわらかいシリコン製のカップを膣の中に入れて経血をためる生理用品
  • デリケートゾーンケア用品:清潔さと快適さを保つケア用品。デリケートゾーン専用のソープ、美容液、クリームなど

体調管理アプリは無料でも使えるものも多く、最初の一歩として始めやすいツールです。

フェムテックを使うことから始めよう

ーー体調管理のアプリを使ってみようと思います。どんな良いことがありますか?

体調管理アプリを使うことで、自分のカラダや気持ちの変化を「見える形」で知ることができます。

生理前にイライラしたり、気分が落ち込んだり、頭痛やむくみが出ることがあります。これはPMS(月経前症候群)と呼ばれ、10代でも起こることがあります。

不調が起こりやすい時期を知っていると、「今は無理をしないでおこう」と行動を調整できます。「この不調はPMSかもしれない」と気づくだけでも、気持ちが楽になることがあるんですよ。

また、記録を続けることで、「痛みが強い」「出血量が多い」「周期が乱れている」などのいつもと違う変化に早く気づけるようになります。それは、必要なときに病院を受診するための、大切な目安にもなるんです。

ーー他には、どんなフェムテックがおすすめですか?

ぜひ、長野市の「Feminity arch WORK LOUNGE (フェミニティ・アーチ・ワーク・ラウンジ)」に気軽に来てください。さまざまなフェムテックやフェムケアアイテムの実物を展示していて、一人ひとりの悩みに合わせて、相談に乗りながら紹介しています。

Feminity arch WORK LOUNGEにはフェムテックのアイテムがいっぱい

たとえば、「コンドーム」もフェムテックの一つ。最近はおしゃれなパッケージのものも増えていて、韓国では、女の子がカワイイパッケージのコンドームを化粧品と同じような感覚で持ち歩くこともあります。「自分のカラダを守るためのアイテム」として、当たり前の所持品になっているんですよ。

ほかには「フェムケアジェル」。これはデリケートゾーンの乾燥やかゆみを防ぎ、清潔で快適な状態を保つためのケア商品です。最初は少しハードルが高く感じても、使っていくうちに「化粧水みたいに当たり前のケア」になっていきます。

中高生で手にする方が多いのは、「月経カップ」。特に運動部や水泳をしている女の子から選ばれることが多く、「生理中でも安心してカラダを動かせる」という声もあります。

「恥ずかしいこと」じゃない、自分のカラダを気持ちよくすること

ーーいろんなものがありますね…。正直、ちょっと恥ずかしい気はします。

そう感じるのは、とても自然なことです。海外では日常的に使われているフェムテックの一部も、日本では「特別なもの」や「いやらしいもの」と受け取られてしまうことがよくあるんですよ。

フェムテックのアイテムは、使い方や目的によっては、自分のカラダを知ったり、緊張をゆるめたりするための一つとして考えられています。自分が心地よく過ごすことは、決して悪いことではないんですよ。

ーー そう考えると、ちょっと身近に感じられますね。

フェムテックが大切にしているのは、つらさや不調を我慢せず、自分のカラダやココロを整えること。「つらいときは無理をしない」「困ったら言葉にしていい」。そんな考え方が、少しずつ広がってきています。

ーー自分を大切にしていいんだって思えます!

女性が自分のカラダのことを知り、無理をしすぎず、気持ちよく過ごそうとすることは、とても自然で大切な権利です。フェムテックは、その選択肢を増やす手段。だからどんどん活用していってほしいですね。

そして、「自分を大切にする」という考え方は、女性だけのものではありません。「フェムテック」という言葉だと女性だけの話と思われがちですが、今は「メンテック( Mentech )」という考え方も広がってきているんですよ。

ーーメンテックですか?

メンテックは、男性のカラダやココロの変化を知り、健康を支えるための考え方です。例えば、前立腺の健康のこと、男性不妊症の悩み、ストレスやメンタルの不調など、男性にも年齢や環境によって起こるカラダの変化があります。女性だけでなく、男性も自分のカラダやココロに目を向け、「無理をしすぎていないかな」「異常はないかな」と気づくことが大切なんです。

女性も男性も、まずは自分を大切にすること。自分の状態に気づき、いたわることができてはじめて、相手のカラダや気持ちにも想像力を持てるようになります。フェムテックやメンテックは、自分のカラダやココロを知り、その先の、人を思いやる社会につながる考え方でもあるんですよ。

「自分のため」に性を学ぼう

ーーお話を聞いていると、フェムテックへの抵抗が少し減った気がします。

フェムテックを特別なものに感じてしまう背景には、日本では、性やカラダ、そしてココロの揺れについて、「恥ずかしいもの」「人に話しづらいもの」「自分で何とかしなければいけないもの」として扱ってきた時代背景があるのかもしれません。

その結果、性やカラダのことを正しく知る機会を持たず、自分のカラダに変化があっても、どう向き合えばいいのかわからないまま大人になる人も少なくありません。

カラダやココロの変化自体は、誰にでも起こる、とても自然なことです。だから、「これって普通なのかな?」「誰かに聞いていいのかな?」と迷ってしまうことは、中高生にとって決して珍しくないことだと思います。

ーー迷ってしまう気持ち、わかる気がします。

大切なのが、「知っているかどうか」で選べる行動が変わるということ。

普段の体調管理や生理のケアも、フェムテックを上手に取り入れることで、「いつもと違う変化」に気づくための手助けになります。つらさや違和感を一人で抱え込まず、相談したり、ケアしたりしていいと知ってほしいです。

こうした「気づいて、行動する」という考え方は、体調や生理だけでなく、「予期しない出来事」から自分を守ることにもつながっていきます。

ーー「予期しない出来事」とは、どんなことが考えられますか。

たとえば、避妊がうまくいかなかったとき。そのときに知っておいてほしい選択肢の一つが、「緊急避妊薬(アフターピル)」です。

緊急避妊薬は、望まない妊娠を防ぐための薬で、性交のあと、できるだけ早く(目安として72時間以内)服用します。「何かあったときに、こういう方法がある」と知っていることで、自分を守ることができるかもしれません。

ただし、緊急避妊薬は医師の診察を受けて処方してもらう必要がある薬です。将来的に処方箋なしで薬局で購入できるような仕組みづくりが始まっていますが、今はまだ薬局やドラッグストアで、誰でも自由に買えるわけではありません。

さらに、地域によっては受診できる医療機関や、処方された薬を受け取れる薬局が限られているのが現状です。そのため、「知っている」だけではなく、どこに相談できるのかを日ごろから確認しておくことも大切です。

(※編集補足 緊急避妊薬の最新情報は厚生労働省のHPを参考にしてください。:厚生労働省「緊急避妊薬の調剤・販売について」

緊急避妊薬はフェムテックそのものではありませんが、「自分のカラダを知り、守るための選択肢を持つ」という考え方は、フェムテックが大切にしてきた価値観と重なります。

ーーこうした知識を知っておくことが大切なんですね。

自分の身に起こりうることを知り、困ったときにどうすればいいかを考えておくこと。それが、「自分のために性を学ぶ」ということです。

困ったときに、一人で抱え込まず、「知っている」「相談できる」ことは、自分のカラダと未来を守るための力になりますよ。

最後にーー自分のココロとカラダを一番大切にしていい

「フェムテック」という言葉はまだ新しいけれど、その目的はとてもシンプルです。それは、自分のカラダの変化やココロの揺れに気づき、自分を大切にしながら生きていくこと。

フェムテックは、病気と診断されるほどではないけれど、「なんとなくつらい」「前と違う」と感じたときに、自分をいたわるための選択肢です。「つらい」「おかしいかも」と感じたら、自分のカラダやココロの声に耳を傾け、必要なケアや助けを選べるようになる。それは、自分を守る力を身につけることにつながっていきます。

今の自分に合った方法を選び、自分のペースで選ぶ。フェムテックをそんな毎日の味方として取り入れてもらえたらうれしいです。

「自分のカラダとココロは、自分のもの」。そう思えることが、いちばん大切なスタートです。

「I LOVE ME」まずは自分を大切にすることから始めてみてください。フェムテックを味方につけて、あなたらしい毎日を歩んでいきましょう。


取材協力:「Feminity arch WORK LOUNGE (フェミニティ・アーチ・ワーク・ラウンジ)」

代表・成澤由美子さん、助産師&インストラクター・天見美穂さん

Feminity arch WORK LOUNGE 代表・成澤由美子さん
助産師&インストラクター・天見美穂さん

女性の健康悩みをテクノロジーで助けるフェムテック専門サロンを展開。女性専用のコワーキングスペース「Feminity arch WORK LOUNGE」(長野市)では、ワークスペースだけでなく、心身をケアできるマッサージや岩盤浴のコーナー、提携エステスペースを併設。最新のフェムテックアイテムを店頭に並べ、気軽に手に取れるようになっているのもポイント。ラウンジでは、定期的に助産師相談会などのイベントも開催しています。

※この取材は、2025年9月10日に行われました。最新の情報は、公式HP、SNSで確認ください。